本日は秋田県立大学 本荘キャンパスにやってきました!
本荘キャンパスといえば以前、アニメの影響を受け製作したロボットを取材した記事もあるので気になる方はぜひご覧ください。
建築環境システム学科の学生はどんな研究をしている?
今回取材するのは、「住宅における低湿度環境が健康に及ぼす影響」について研究している学生、田村さんです。実際にどんな研究をしているのか、どんな結果が得られたのかなどを詳しく聞きたいと思います。
よろしくお願いします!
ざっくり!田村さんの研究内容
- 研究内容
住宅における低湿度環境が健康に及ぼす影響に関する実験的研究 - 研究背景
低湿度の(乾燥した)環境が健康にどのような影響を及ぼすのか分析されていない。 - 目的・方法
低湿度環境がどう影響を及ぼすか明らかにする
方法①:DAGを用いた実施済み調査の再分析
方法②:被験者実験
田村さんがこの研究をはじめたきっかけを教えてください。
先輩が「乾燥感」について研究していたのがきっかけです。
乾燥感?…それって何ですか?
人には乾燥を直接感じる「乾燥覚」はありませんよね。たとえば人って、触覚、視覚などへの刺激とそのときの状況を脳で総合的に判断して「乾燥している」と感じているのですが、その感覚は人によって差があります。
先輩はその「乾燥している感覚(乾燥感)」について、研究していたんです。
先輩はその「乾燥している感覚(乾燥感)」について、研究していたんです。
そういうことか!
僕も冬に乾燥を感じるし、せっかく研究するのであれば自分ごとのテーマがいいと思ったので、先輩の研究を引き継いで乾燥感や湿度に関しての研究を始めました。
研究内容を詳しく教えてください。
乾燥感が生じる原因はいろいろあるのですが、僕は「低湿度環境が健康にどのような影響を及ぼすのか」を調べる研究をしました。それを明らかにすることで、乾燥感を感じさせないような住宅や設備をつくる際に、参考となる指標が作れると思ったんです。
温度・湿度をコントロールできる部屋で被験者実験
実験方法は大きく2つあります。1つ目は、【鼻が乾燥したり喉が痛いという症状を訴える人は、どのような環境で居住しているか】という、すでにある研究結果を再分析する方法です。2つ目は、本荘キャンパスにある「空調試験室」を利用した被験者実験です。
被験者実験では具体的にどのようなことを?
高湿度・低湿度それぞれ違う環境をつくり、人体にどのような影響を及ぼすのかチェックしました。
被験者実験の内容
- 【A】湿度が高い部屋 【B】湿度が低い部屋を用意
- 被験者は【A】【B】それぞれの部屋で1時間過ごし、一定間隔でアンケートを回答
被験者は入室後、椅子に座ってDVD鑑賞をしてもらい、入室してから30分・60分のタイミングでアンケートに回答します。アンケートの質問は「この室内の湿度をどう感じますか」や「この湿度を受け入れられますか」といった内容です。アンケートと同時に口の中の水分量や、皮膚の水分量を測定できる機械なども使ってデータを収集しました。
ちなみにじゃんごさんには【A】と【B】、両方の部屋に入ってもらいましたが、違いはわかりましたか?
【B】に入った瞬間、「湿度が高いな」って感じました!自信をもって言えますね!
【B】の部屋、湿度7%ですよ。
【B】の部屋、湿度7%ですよ。
え…
僕の感覚、もしかしておかしい!?
おかしくはないと思います。実際に【B】の部屋で長時間過ごした被験者のほとんどは、「乾燥を感じない」と回答しています。
この被験者実験では、「湿度の変化」と「乾燥感」の関連性は少ないという結果となりました。
この被験者実験では、「湿度の変化」と「乾燥感」の関連性は少ないという結果となりました。
人の感覚って敏感だと思いますが、意外と鈍感だったりするんですね~。
そうかもしれませんね。この結果を受けると、「なぜ乾燥感を感じるのか」という部分が不明確になってくるんですよ。なので今後は「乾燥感のメカニズム」を解明するため、春から大学院に進んで研究する予定です。
今回の研究では、乾燥に対して敏感に反応する人はいませんでしたが、湿度が低い部屋にいた時、「この部屋にずっといるのは受け入れられない」と感じる人が多いことがわかりました。なので「湿度受容度」を指標として作る居住空間は、より住みよい空間になるかもしれません。
健康的な住宅作りに貢献したい!
田村さんが秋田県立大学に入学した理由は?
父が建築関係の仕事をしていたので、次第にもの作りに興味が湧いて「建築について学びたい!」と思うようになりました。この大学は地元から近いということも、志望した理由のひとつです。
環境計画学グループ(研究室)ではどんなことを学べますか?
1年~2年生までは基本的な建築の講義を受け、研究室は3年生の後期から選択することができます。建築はデザインや構造などいろいろ学べますが、僕の中では「健康的に暮らすこと」や「よりよい居住空間を形成すること」が建築において重要な部分だと思っていたので、環境面を学べる研究室に入りました。
4年間建築を学んで感じたことはありますか?
僕は大学に入学するまで建築を学んでいなかったので、高校から建築を学んでいる同級生と差がうまれるんじゃないかという不安がありました。ですが講義は基礎的な部分から学ぶことができたので、ハンディキャップは全然感じませんでしたね。
この大学の特徴は、先生との距離が近いことだと思うんです。わからないことがあったら気軽に相談できます。施設や設備に関しても、先ほどのような実験室があったり、建築を学ぶ上で必要なものが揃っていると思います。
田村さんの研究で、大変だったことはありますか?
被験者を集めるのに苦労しました。僕が行った実験は、1度行うと3~4時間程度かかります。被験者は後輩にお願いしたのですが、結構な時間がかかってしまうので調整するのが難しくて…。被験者を集めることができても、実験では機械を使うのでマシントラブルが起きたりと大変でした。
田村さんは大学院に進まれるとのことでしたが、将来目指している職業は?
将来的に、建築設計の分野で建築物のインフラを設計する「設備設計」を目指しています。
大学院での目標を教えてください。
よりよい住宅を作るため、技術はどんどん進歩しています。新しい技術が生まれるのに比例して、新しい問題も起こります。僕はその問題を追及して研究を進め、快適で健康的な住宅作りに貢献できるよう頑張りたいです!
田村さんのような研究者がいるおかげで、自分は快適な生活ができるんだ!と実感した取材でした。ありがとうございました~!