どんなロボ?アニメの影響を受け製作したロボットを徹底調査してきた|秋田県立大学大学院:システム科学技術研究科

じゃんご
本日は秋田県立大学 本荘キャンパス大学院:システム科学技術研究科におじゃましています!

ここでは、人工知能を持つロボットの技術開発に代表されるように、これからのものづくりの基本となる諸機械や部品の知能システム化について多面的に学んでいます。

大学院生の関野さん(1年)、藤原さん(1年)、伊藤さん(2年)に、どんなロボットを作っているのかご紹介していただきましょう。

(左から)関野 晃聖(せきのこうせい)さん、伊藤 雄拓(いとうゆうた)さん、藤原 涼介(ふじわらりょうすけ)さん

鳥獣被害対策用ロボットを作っています!

じゃんご
これはロボット…ですか?
藤原さん
はい!鳥獣被害対策用ロボットです。人と動物たちが住む土地の棲み分けができるようにすることを目的として作られていて、基本的に歩いて動物たちを威嚇して追い払います。

鳥獣被害対策用ロボットの「しろやぎ」。秋田県内でクマによる犠牲者が多数発生したことを受け、准教授の齋藤先生が鳥獣被害対策「動物型かかしロボ」開発をスタート。しろやぎは2000年から開発しており、かかし仕様への改装は2017年から

 

こちらが「しろやぎmark2」分解整備中で右脚を外している

じゃんご
鳥獣被害対策用ロボットというくらいなので、もっと大きなロボットだと思っていました!
藤原さん
製作中ではありますが、「かみやぎ」や「おおやぎ」という大型のロボットもありますよ。
藤原さん
過去に「しろやぎ」の効果測定をするため、動物園と協力し検証を行ったところ、サルや子グマには効果が見られました。

しかし大人のクマには逆に興味をひかれて、ロボットに寄ってきたということもありました。その結果から、威嚇できるかできないかの基準はロボットの大きさに関係性があるのでは?と仮説を立て、大型ロボットの製作に取り掛かりました。

しろやぎは、ラジコン型ロボットの格闘戦「かわさきロボット競技大会」にも出場している

じゃんご
ロボットの名前に「やぎ」が付けらていますが、名前の由来はあるんですか?
藤原さん
それは先生に聞いたほうが…

齋藤先生
はい、よろしくお願いします。

システム科学技術学部 知能メカトロニクス学科 齋藤 敬 准教授

齋藤先生
僕の所属していた研究グループは人工心臓や人工神経の実験のためにヤギを飼っており、そこから命名しました。しろやぎが2001年に完成した際、ヤギとロボットと僕で記念撮影したんです。その時、ロボットの動きでヤギがとんでもなく驚いて。その体験から、しろやぎは「きっと野生動物にも威嚇効果があるだろう」と実感しましたね。
じゃんご
かっこよくデザインされたイメージ図?がありますが、これはなんですか?
齋藤先生
クラウドファンディングを行った際の返礼品(ポストカードやクリアファイル)になったデザイン画です。「しろやぎの未来型」をイメージしていて、機動戦士ガンダムなどのデザインで活躍されている、世界的にも有名なメカニックデザイナーの大河原邦男先生に描いていただきました。
じゃんご
へぇ~!かなり貴重なデザインなんですね~!
じゃんご
ところで、関野さんが持っているロボットは何ですか?
関野さん
ローラー駆動によって動く、通称「巻尺腕」と呼んでいるロボットアームです。中に巻尺のような金属のテープが組み込まれていて、棒のような形ですごく伸び縮みします。巻尺の仲間なのである程度曲がっても元に戻ったりと、結構荒っぽい使い方ができます。
じゃんご
巻尺腕はどんなシーンで活躍するロボットなんですか?
関野さん
作業現場での作業範囲の拡大が期待できます。例えば、距離が遠くて手が届かないときに使えますし、屋根の雪下ろしなどにも使えるよう試作を重ねています。将来的には小型化を目指し、作業現場のみならず日常生活にも役立つロボットにしたいと思っています。
巻尺腕を使った屋根の雪下ろし検証

齋藤先生
巻尺腕はかわさきロボット競技大会で、しろやぎより大きいロボットに負けたのがきっかけで作りました。「創聖のアクエリオン」って分かります?実は巻尺腕、このアニメの「無限拳(むげんパンチ)」を工学的に実現したものなんです。大会ではしろやぎのリーチが短くて負けたのですが、月まで届く無限拳みたいなものを実装したら、大型機にも一泡吹かせられる!って思ったんですよね(笑)

内部にはまさに「巻尺」のようなローラーがついており、回転させることで伸縮する仕組みになっている

じゃんご
先生はロボットを作るにあたり、ロボットアニメなどからイメージが湧いてくるんですか?
齋藤先生
そうですね。いろいろすごい発想が練られていますし、さすがに異次元からパーツを呼び寄せるのはムリですけど、それっぽくできる手段がいろいろあるので。ぜひ活用したほうがいいと思っています。
齋藤先生
例えば巻尺腕の使い方は元々「天誅」という忍者のゲームの立体的な移動方法をイメージしてました。最近のものだと、「進撃の巨人」の立体機動装置とかが近いのですが、一番似ているのは「コードギアス」のランスロット(というロボ)の跳躍も出来るワイヤ機構や、「メイドインアビス」のレグ(少年型ロボ)の伸縮腕ですね。巻尺腕のスピード、力ともまだまだ遠く及びませんが…
じゃんご
(ついていけなくなってきたぞ…)
齋藤先生
ちなみに、しろやぎの構造はタカラトミーが展開する獣型ロボット「ゾイド」から着想を得ています。
じゃんご
たしかに!僕もゾイド世代でたくさん遊んでいましたが…どことなく雰囲気がある…!
齋藤先生
ブレードライガー(※)の要素が入っています。わかってくれるとありがたいのですが、今は”ゾイドをしらない世代”もいたりして泣いています(笑)
ブレードライガーとは?
「ゾイド」シリーズに登場するライオン型ロボット。その強さから「獣王」の異名を持つ。

秋田県立大学のデジタルものづくり

じゃんご
この研究室では義手や義足を神経情報で制御する「神経インターフェース」という研究も行われていて(「鋼の錬金術師」のオートメイルとか、「攻殻機動隊」の義体っぽいですが)、一連のロボット研究は動物実験用の動物模擬ロボットから始まっています。
じゃんご
その一方でバイオ分野にも研究は発展していて、体から取り出した細胞に穴をあけ、薬などを挿入してから体内に戻し、細胞に働いてもらうという研究も進められています。先生によると、例えるなら「はたらく細胞」の白血球さんにいろいろ装備を追加する感じ、だそうです。
医療の現場で期待されるロボット

商業用モデルとして作られた「細胞改造ロボット」

じゃんご
システム科学技術研究科では“細胞治療用細胞改造ロボット”が研究・開発されていて、将来的に、脳梗塞などの治療に役立つと期待されています!
齋藤先生
僕が製作したロボットを学生がひきついで改良し、最終的には商業用モデルとして企業が作るようにもなりました。

歴代の細胞改造ロボット。左が教員の試作機、中が学生の改良試作機、そして右が商業用モデルCP-01。

齋藤先生
商業用モデルが作られるようになったのは、学生が改良したプロトタイプがあったからなんですよね。学生たち自身で図面を作成して、部品加工・プログラミングまで仕上げたからこそ、それを手本にして実用ロボットが完成したわけです。(ちなみに「電脳コイル」っぽい、絵を描くようなプログラミング言語で制御しています)

実際に動かしてみた

齋藤先生
それでは、しろやぎを動かしてみましょう!

しろやぎ
ウィンウィンウィン!!!!

じゃんご
思ったより激しい動き!!
齋藤先生
見た感じの予想より素早い動きをしますよね。

機械音を鳴らしながら跳ねおどるように動いたしろやぎ。これなら小動物は驚いて里山に帰っていきそうだ

しろやぎの動き(イメージ)

齋藤先生
これより大きい「かみやぎ」も同じような動きをしますよ。
藤原さん
僕はその「かみやぎ」の製作を担当しています。

藤原さんが製作している「かみやぎ」。こちらも「しろやぎ」同様に、鳥獣被害対策用ロボットとして作られている

じゃんご
かみやぎが動いたら、確実に動物は逃げていきそう…。
藤原さん
まだ動物に対して検証まではできていませんが、現在動作に問題があったので、それを直すことができたら検証スタート!という感じです。
藤原さん
将来的には、自動運転かつ無人で運用することを想定して作っています。近くに操作する人がいない状態でロボットが周辺警備したり、動物を見つけたら威嚇行動をとるのが理想です。
じゃんご
つまりAI搭載ロボットということですか?

藤原さん
その通りです!

じゃんご
こっちはもっと大きいですね~。

伊藤さんが担当している「おおやぎ」。この大きさになると、近未来感が高まってきます

伊藤さん
「おおやぎ」は僕が作っています。2019年から設計を続けて、つい最近全体のパーツをまとめ始めました。こちらは人がこのロボットに搭乗し、操作して動かせるようなタイプです。

じゃんご
「ゾイドに乗れる」みたいでカッコイイ!!

伊藤さん
現段階では取り付けていない搭乗部分が載ると、高さ2メートルくらいになります。

大河原邦男先生がデザインしたデザインを参考に製作中!

じゃんご
「おおやぎ」も鳥獣被害対策用ロボットとして作られているんですか?
伊藤さん
おおやぎは山肌など地面をあまり傷つけることなく移動できるため、森林作業用のロボットとして活躍できると思っています。来年には、実際に動かして検証に入れたらと思います。
じゃんご
男のロマンが詰まってますね!
齋藤先生
ちなみに今、この研究室で担当している1・2年生向け学生自主研究では女子学生の方が多いぐらいなので、ロボットはもうみんなのロマンと言っていいんじゃないでしょうか。

ロボット好きが集まる場所

じゃんご
みなさんがシステム開発やロボット研究をしてみたい!と思うようになったきっかけを教えてください。
伊藤さん
もともとロボット(ガンダムなど)に興味を持っていたのがきっかけです。次第に、「実際に作ってみたい!」と思うようになり、この研究室を選びました。
関野さん
僕もロボットが好きでこの分野を学んでいるのですが、初めて研究室を見学した時、ロボットは人の役に立つと知りました。鳥獣被害対策用ロボットをはじめ、危険な屋根の雪おろしなどもロボットで実現できるので、「自分もロボットづくりに挑戦してみたい!」と思いました。
藤原さん
ロボットに興味があったのは大前提としてありますが、僕は大学のサークルで、今と同じようにロボットを作るサークルに入っていました。次第にもっと深く知りたい!と思うようになり、今はこの研究室でロボットづくりをしているという感じですね。
じゃんご
プログラミングや設計の仕方などは、どのように学びましたか?
伊藤さん
基本的に大学で学んだことを生かして研究しています。高校を卒業するまでは専門知識がなかったので、苦労することもありますね(笑)
関野さん
苦労といえば、設計ですね。自分が設計した段階で完成のイメージがつくのですが、実際組み上げてみたら思ったようにいかないことがしばしば…。
秋田県立大学 本荘キャンパスにある学科・活躍が期待される分野
  • 機械工学科
    輸送用機器や電気機器などの開発 / 設計 など
  • 知能メカトロニクス学科
    デバイス開発 / 設計やシステムエンジニア など
  • 情報工学科
    ITソリューション、ITインフラ設計 など
  • 建築環境システム学科
    建築設計、建築施工管理 など
  • 経営システム工学科
    経営コンサルティング、商品開発 など

※今回取材したのは、「大学院:システム科学技術研究科」です。地域の研究機関や企業との連携のもと創造力・総合力を有するエンジニア育成をしています。

じゃんご
それぞれ担当する研究への意気込みをお願いします!
藤原さん
やはり鳥獣被害対策用ロボットが実際に使われることですね。まずは、「かみやぎ」の自動化に向けて製作を頑張りたいです。
伊藤さん
「おおやぎ」は森林作業だけでなく、いろいろな新技術を盛り込んでPRしたり、それこそ観光にも役立つことが期待されています。多様性のあるロボットをつくれたらと思います。
関野さん
「巻尺腕」はより生活の役に立てるロボットにするため、企業と共同開発をしている段階です。この調子で実用化に向かっていきたいです!
じゃんご
学生が挑戦するロボットづくり、想像以上に本格的で気になるものばかりでした。みなさんのものづくり、応援しています!本日はありがとうございました~!
取材データ

秋田県立大学 本荘キャンパス大学院:システム科学技術研究科
住所:秋田県由利本荘市土谷字海老ノ口84-4
大学HP:https://www.akita-pu.ac.jp/
大学院紹介ぺ―ジ:https://www.akita-pu.ac.jp/gakubu/grad-sys/daigakuin0100

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