スマート畜産を研究する女子大生!AIを搭載した装置を活用し効率化|秋田県立大学 生物資源科学部 アグリビジネス学科

じゃんご
突然ですが皆さん、秋田県立大学 大潟キャンパスには牛舎があることを知っていましたか?

 

大潟キャンパスで活動するのは、生物資源科学部 アグリビジネス学科の学生たち。この牛舎では、4年生の遠藤優佳さんと菅原二千花さんが「スマート畜産の研究」をしています。

じゃんご
秋田県立大学で牛について研究?スマート畜産?

じゃんご
内容が気になる!

この記事では、秋田県立大学 生物資源科学部 アグリビジネス学科の学生はどんなことを学び、どんな研究をしているのかを取材しました。進路に悩んでいる高校生の皆さん、ぜひ参考にしてください!(取材日:2021年10月)

秋田県立大学 生物資源科学部 アグリビジネス学科とは?

農業・農村・食産業の領域を学び、地域の現場で生かせる専門知識と技術などを身に付けることができる学科。

アグリビジネス学科では「畜産」も学べる!

じゃんご
牛舎内を案内してくれるのは、この学生さんたちです!

生物資源科学部 アグリビジネス学科 家畜資源利用推進プロジェクト4年生 遠藤優佳さん(写真左・岩手県出身)、菅原二千花さん(写真右・秋田県出身)

じゃんご
今日はよろしくお願いします!お二人は毎日大潟キャンパスの牛舎に来て、研究などを行われてるんですか?
菅原さん
平日はここに来て、牛のお世話をしながら研究を進めています。土日は基本、お休みです。
遠藤さん
毎朝9時に来て、牛舎にいるのは17時くらいまで。最近だとその後は、先生と卒論について相談したりしますね。
菅原さん
アグリビジネス学科の場合、1・2年生は秋田キャンパスで農畜産物の生産から販売・消費などの基礎を学び、3・4年生からは大潟キャンパスで実践的なことを学びます。

大潟キャンパス内にあるアグリイノベーション教育研究センター。秋田県立大学が持つ農学系・理工学系の知見を総動員して教育・研究を行う拠点として機能している。

じゃんご
お二人がアグリビジネス学科を選んだ理由は?
遠藤さん
親族で看護系に進んでいた人が多かったので、私も看護系に進むのだと思ってました。でも高校生になってから生物学に興味を抱いて、動物に関わることができる大学に進もうと。
じゃんご
もともと、牛への興味はありましたか?
遠藤さん
最初は動物に関わりたかったという一心でしたが、今ではとてもハマっています(笑)

慣れた手つきで牛を扱う遠藤さん。卒業後は花立牧場(秋田県由利本荘市)に就職が決まっている。

じゃんご
菅原さんの志望理由は?
菅原さん
私は高校生の頃から、牛について学びたい!って思ってました。
じゃんご
地元にぴったりな大学があってよかったですね。
菅原さん
はい!昔、おばあちゃんが牛、豚、鶏といったいろんな畜種を育てていたので、その影響もあって。でも高校では牛について詳しく学ぶことができなかったので、大学では絶対に学びたかったんです!

菅原さんはこれまで学んできた知識や経験が生かせる、あらゆる畜種をサポートする職場から内定をもらっている。

アグリビジネス学科の主な就職先

卸・小売 / JA(農協)・農業関連団体 / 農機・農業資材 など

じゃんご
アグリビジネス学科で学んだ知識やスキルを活かせる職場で、多くの卒業生が活躍しています!

菅原さんの研究内容

じゃんご
この牛舎にはどんな種類の牛がいるんですか?
菅原さん
この牛舎にいるほとんどは、日本短角種といわれる牛ですね。
遠藤さん
黒毛和種ジャージー種も数頭います!
じゃんご
ジャージー?「ジャージー牛乳」の?
菅原さん
そうです!かわいいですよね~。

じゃんご
めっちゃかわいい~!

菅原さん
ジャージー種って比較的人懐っこい性格なんですよ。

産まれて数週間のジャージー。毛並みがキレイで穏やかで、とってもかわいい!!

遠藤さん
この牛舎にいるジャージー種はすべてオスです。オスはミルクがでないので、生後6か月も経たないうちに肉用として出荷されるのが一般的。そしてほかの種類のオス牛と比べるとお肉がつきにくいので、市場価値が低いんです。
じゃんご
ええっ、そうなんですか!?
菅原さん
なので私はオスのジャージー種の価値を高めることができないかと、こんな研究をしています!
菅原さんの研究
  • 問題・課題
    日本短角種の明確な発情がわからない。
  • 研究目的
    ジャージー種去勢牛を活用した放牧繁殖牛の発情発見
  • 研究方法
    「発情発見装置」をジャージー種のオスに取り付けてあらゆるデータを記録する。
菅原さん
これまで管理者は自分の目でメス牛の発情を確認していましたが、最近では発情をデバイスで確認できる発情発見装置を導入する農家さんが増えています。
じゃんご
首についているのが、その装置ですか?
菅原さん
そうです!

発情が始まると落ち着きがなくなり行動量が多くなることを利用して、人工授精の適期をデバイスに知らせてくれる。そのほか疾病兆候や活動量の低下なども人工知能(AI)で状態を検知してくれる

菅原さん
この装置は一般的にメス牛に取り付けますが、私はその装置を市場価値が低いジャージー種のオスに取り付けて、メスの日本短角種の発情を見極めよう!…という研究をしています。

じゃんご
これがスマート畜産の研究ですね!

菅原さん
人ではなく機械が通知してくれるとなれば、省力化(人件費削減・作業の効率化)にもつながりますよね。この研究がうまくいき、現場でも活用できるようになったら、多頭飼いしている農家さんは助かるんじゃないかなと思います。
「スマート畜産」とは?
畜産経営の効率化などを目的とした、ITや機械を駆使した畜産のこと。

遠藤さんの研究内容

じゃんご
遠藤さんはどんな研究を?
遠藤さん
私は、ICTを活用した放牧牛管理システムの実証という研究をしています。
遠藤さんの研究
  • 問題・課題
    公共牧場(※)の管理者の高齢化・人手不足
  • 研究目的
    ICTを活用した放牧牛管理システムの実証
  • 研究方法
    牛の個体を学習する「AI搭載センサーデバイス」を活用し、監視時間の短縮や生産性の向上を確認。

※農家等から牛の預託を受け、乳牛もしくは肉用牛の集団による育成や繁殖を担っているか、もしくは乾草の生産などを行う牧場のこと。

遠藤さん
簡単にいうと、放牧地にいる牛にGPSをつけてデバイスでうまく管理できるかを研究しています。

じゃんご
まさに、牛のGoogleマップ!

牛の居場所をリアルタイムでGPS管理でき、スマホやPCなどのデバイスでどこからでも確認できる

遠藤さん
牛たちにGPSをつけることで牛の居場所がデバイスで確認できるようになると、管理者の負担が減るのでは?と考えたんです。
じゃんご
確かに、広大な放牧地だと牛がどこにいるかわからなくなりそう…。もしGPSがついていたら、目当ての牛を探す手間が省けるので効率化が図れますよね。
遠藤さん
将来的に、生産コスト低減による経営の安定化が期待できると思います!
じゃんご
秋田県立大学で研究しているスマート畜産、ここまで本格的だとは思ってませんでした。
菅原さん
ICTを活用するスマート畜産を研究している大学は、全国でも珍しいと思います。

家畜資源利用推進プロジェクト

じゃんご
牛をあまり近くで見る機会がないので、改めて見ると大きいですね~。

じゃんご
そして角もすごい!

遠藤さん
農場によってそれぞれですが、基本的に秋田県立大学の牛舎では、角を切らないという方針で育てています。
じゃんご
触っても大丈夫ですか?
遠藤さん
いいですよ!でもヨダレでびちょびちょにならないよう注意してくださいね(笑)
じゃんご
ごめんね。ちょっと触るよ~…

じゃんご
あったかい!!

遠藤さん
牛の角は中が空洞になってて、そこに血が流れているのであったかいんですよ。
じゃんご
この牛舎にいる牛は出荷もしているんですか?
遠藤さん
実は日本での短角種の流通量は3%ほどの割合で、とても貴重なんです。
じゃんご
そういえば、あまり聞きなじみがないですね。
遠藤さん
最近では霜降りのお肉がブームになっていますよね。でも、短角牛などからとれる赤身肉は低カロリー・低脂質でヘルシー。さらにたんぱく質は、他の部位よりも多く含んでいるんです!私たちが育てた短角牛を肉のわかばさんで見つけた際は、ぜひ食べてみてください!
じゃんご
短角牛の赤身…想像するだけでお腹がすいてきました(笑)
菅原さん
ここの牛舎から出荷した後、市場に出たお肉を買い戻して食味試験をしたのですが…

菅原さん
とってもおいしかったです!

じゃんご
短角牛、食べたくなってきた~!
秋田県立大学 アグリビジネス学科のプロジェクト
じゃんご
アグリビジネス学科の学生は個人での研究のみならず、家畜資源利用推進プロジェクトも行っていました!

<プロジェクト概要>

  1. 草資源を活用した日本短角種を柱とする肉用牛の安定生産
  2. 家畜排せつ物のたい肥化による物質循環と飼料の自給
  3. 地域産飼料資源の活用による農畜産業の発展
  4. 赤身肉の品質向上と需要拡大
菅原さん
重機を動かして飼料を運んだりもします!

遠藤さん
秋田県産のトウモロコシ・ソバ・小豆粕などを使った配合飼料なども私たちで作っています!

アグリビジネス学科での経験

じゃんご
それぞれの研究やプロジェクトを進める中で、難しかったことはありますか?
遠藤さん
例えば牛がいつもとは違う時間帯に行動していた時、「なんでこんなことしたの?」って聞いても答えてくれないところですね(笑)そこが畜産の難しいところかな。
菅原さん
私たちの研究は機械を使用しているので、予期せぬトラブルにも苦戦しています。例えば、センサーが反応していなかったり…。
遠藤さん
ソーラー充電式の装置なのに、充電がうまくいかないこともあったよね(笑)
じゃんご
就職先では、アグリビジネス学科での経験をどう生かしていきたいですか?
菅原さん
2年生の時に北海道の農家さんへインターンシップに行ったのですが作業が本当に大変で…。そういうのを見て、少しでも負担を減らせたらなと思い、生産者をサポートできる就職先を選びました。
菅原さん
畜産の将来は、ICT化を推し進めることで必ず省力化が期待できると思います。「少しでも楽に!生産者の方が働けるように!」をモットーに頑張りたいです。
遠藤さん
就職先では、大潟キャンパスの牛舎にはいない乳牛を扱います。この先も興味を持ったことに対して、学び続ける姿勢を忘れずにいたいです。私は牛が好きなので、「生活の中に牛がいる」という状態をずっと続けたいです!
じゃんご
お二人が立派で、感動しました!今日はお忙しいところありがとうございました!
取材データ

秋田県立大学 大潟キャンパス 生物資源科学部 アグリビジネス学科
住所:秋田県南秋田郡大潟村南2-2
大学HP:https://www.akita-pu.ac.jp/
Twitter:https://twitter.com/tk_usi3

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