【対談】秋田弾き語りシンガーソングライター・ちさと

 

じゃんご:よろしくお願いします!

ちさと:よろしくお願いします!

 

今回はじゃんごブログの特別企画。

秋田県大館市から「自分らしさ」を表現するシンガーソングライター・ちさとさんとの対談です。

 

プロフィール

  • 名前:ちさと(シンガーソングライター)
  • 出身:秋田県大館市出身・在住
  • 年齢:20歳

小学3年頃にの「急性リンパ性白血病」と診断され、紹介された青森県弘前市の病院に入院。
2008年1月には脳梗塞を発症。同年5月に退院。

高校2年になった15年春には、ストレスを処理できず過呼吸を起こすようにもなり、「高次脳機能障害」と診断される。

その後は大館市のご当地アイドル「まちあわせハチ公ガールズ」の活動を約1年間こなし、現在はシンガーソングライターとして秋田県のイベントやライブ講演会などで「高次脳機能障害」の認知度を広めている。

 

ステージに立って、夢を与えたい。

じゃんご:僕はすごくアイドルが好きなのですが、地元秋田に新しいアイドルグループができる!ってなった時は嬉しかったです。

アイドルになろうとしたキッカケってありましたか?

 

ちさとステージに立つことがすごく好きでした。自分は病気を持っていたのでテレビをよくみてたんですけど、歌やアニメの力ってすごいなって。

勇気をもらえたので、アイドルというカタチで同じ立場になれたらなぁ~っていうのがキッカケでした。

病気で入院している子たちに「退院して夢かなえれるんだよ~!」って勇気を与える存在になりたかったんです。

 

じゃんご:ずっと、ちさとさんのツイッター見まくってたんですけど想いの丈がすごく伝わります。

やっぱりちさとさんの想いってすごく強いんですね。泣いてしまいそうになります!

 

ちさと:いやぁ~(照)

 

じゃんご:もともとアイドルは好きだったんですか?

 

ちさと:やっぱり「ステージに立ちたい!」「目立ちたい!」が強かったです。

 

じゃんご:僕も目立ちたい。共感できます(笑)

 

 

じゃんご:ちさとさん、好きなアイドルいますか?

 

ちさと乃木坂46がすごく好きです!

 

じゃんご:あ~めちゃくちゃいい!

 

じゃんご:でもメンバー次々と卒業発表していってるので、少し寂しいですよね…ななせまるがいなくなっちゃう…

 

ちさと:私はみなみちゃん(星野みなみ)が好きなんですよ。

 

じゃんご:あ~わかります。可愛いっすよね。

 

ちさと:いいですよね♪

 

自分の障害をわかってもらえないことが苦しかった。

 

じゃんご:アイドル活動をしていくにあたって、不安などはありましたか?

 

ちさと:アイドルをはじめた時期に「高次脳機能障害」が発覚したんです。もともと「引きこもりがち」や「塞ぎこみがち」でしたが、その障害もかぶさってきて…。

でも「(白血病や高次脳機能障害など)どっちも広めていこう」って思うようになりました。

最初、障害のことは運営側とメンバーにしか伝えてなくてファンには非公開だったんです。

 

じゃんご:非公開だった「高次脳機能障害」はいつ頃公開したんですか?

ちさと:アイドルを卒業してから発表しました。

アイドルやってて、ひいきされたら嫌だし、グループにもマイナスになると思ったので非公開にしていました。

 

じゃんご:精神面で苦しくはなかったですか?

ちさと:言っても結局、自分の障害がわかってもらえないことが苦しかったです。「そんなの障害じゃない!障害だと思うな!」とか言われたり。

でも障害の認知度が低すぎるっていうのが原因だと思います。

 

じゃんご:僕もちさとさんを知って高次脳機能障害のことを知りました。若い人でもなるんだ、って。

 

ちさと:認知度はまだまだ低いですが、私が発信して少しでも障害の認知度を上げていけたらいいなぁ~と思って今活動してます。

 

ちさと:自分自身でも気づかないんです。言われてから気づいた…みたいな。

コレ、あてはまるじゃん!
みたいな(笑)

 

じゃんご:もしかして「自分に障害があること」に気づけてない人、いるかもですね?

 

ちさと:いると思います!この歳で高次脳機能障害になることが珍しいことらしくて、元々病気をしていて~というケースがほとんどないみたいです。

私の場合、見た目が普通すぎて(笑)


▲元気で、明るい、普通の女の子だったちさとさん。


高次脳機能障害とは?
記憶障害・注意障害・遂行機能障害・社会的行動障害などの症状があらわれる。それらの症状により日常生活または社会生活に制約がある状態。
高次脳機能障害情報・支援センターHPより

 

アイドルからソロアーティストへ

じゃんご:ちさとさんの歌、すげー心に響くんです。本気で歌詞を書いて、自分の心をストレートに表現しているアーティストだと思います。

本当に夜中聴いたら泣いちゃうレベル。ちさとさんの人生を考えたらなおさら響きます。

 

じゃんご:好きです。

ちさと:いやぁ~嬉しいです!笑

 

じゃんご:アイドルを卒業されてから、現在ではシンガーソングライターとして活躍されています。

卒業時点で、「シンガーソングライターなろう!」って決めていたんですか?

 

ちさと:そうですねぇ~。アイドル始める前の高校1年生の頃にバンド活動をしてて、その時に講座に通っていました。

その中でバンドを組んでいろいろなところに出ていました。アイドル時代も両立してやっていました。

 

じゃんご:おぉ~。技術面は揃っていたんですね。

 

ちさと:歌う事と表現することが好きだったので、ソロでやろう!って思いました。

 

「認知」と「理解」の話

 

じゃんご:ちさとさんのツイッターで「ハローワーク」の投稿を見たとき、これ、普通のシンガーソングライターがやることじゃないな、本気で伝えたいんだな、っていうのがすごく伝わりました。

 

ちさと:すみません(笑)

じゃんご:心から発信したいんだな、っていうのが伝わりました。

 

ちさと:あれ、親がSNSで発信しているのを私が見つけて、「これ、拡散すべきだよなぁ~」って思いました。

勿論、親に相談して投稿しましたよ。
最初は「え~」っていう反応でしたけど(笑)

でもやっぱり発信する人がいないと同じ思いをする人が増えるから、それは嫌じゃん!って説得しました。

 

じゃんご:僕もあの投稿を見たとき、「なんで認めることができないんだろう…」って悩みました。
なんか、くやしくなってきちゃって。

 

ちさとくやしい~。

 

ちさと:結局、みんな知らない状態なんです。だから色々な手続きや申請をする側の人から「教えてもらえない」んですよ。

通院している青森の病院で「こういう制度、青森ではあるから秋田もきっとあるよ」っていうのを教えてもらって、それをコッチが説明する~みたいな現状です。

何回も申請してるのに全然スムーズにいかないんです。前例がないので。

 

じゃんご認知度の低さと体制が整っていない現状なんですね。

 

ちさと:そうですね~。

目に見えない障害にも目を向けて欲しいです。

 

伝え方は、歌だけじゃない。

 

じゃんご:ちさとさんと言えば、日産サティオ秋田お天気フィラー出演や、最近では山形県高次脳機能障がい者リハビリテーション講習会での講演もされていましたよね。

やはり歌だけでなく、
伝える活動もしていきたいですか?

 

ちさと:そうなんです。ありがたいです。

歌だけじゃ伝わらない部分があると思うので、お話しで伝えて、さらに歌う~っていうのが、私の思いが全部伝わるのかなぁ~って思ったり。

当事者がきてくださる場では、逆に学んだり、教養を深めることができます。

 

じゃんご:さまざまな挑戦をしているちさとさんですが、「これに挑戦してみたい!」ということはありますか?

 

ちさと:ん~…。やっぱりいろんな人に伝える場所が欲しいです。もっともっと呼ばれるようになりたい。イベントに呼ばれたい。

 

100名以上のサポーターと完成させたオリジナルCD


▲秋田県のクラウドファンディングサービス FAN AKITAのサポートで完成した、オリジナルの3曲が入ったCD。

じゃんご:クラウドファンディング(FAN AKITA)では、予想以上の支援してくれた方がいたと思います。

実際に数字や支援数をみてどうでしたか?

 

ちさと:最初は「CDつくりたいけどお金的な部分がキツイよなぁ~」というところがあって、すごい迷ってました。

だけどいろんな方から「CDつくるなら協力するよ!」ってお言葉をいただいて、「あ、みんなでCDをつくりたい。頼りたい。」と思いました。

 

ちさと:でも、集まるか不安でした。

なので設定金額を10万円にしたんです。

結果的に60万円を超えるご支援をいただいて、100人以上のサポーターがいて。ほんとにいろんな方が協力してくださって感謝です。

 

じゃんご:みんなの力で完成したCDなんですね。

ちさと:そうですね~。誰かひとり欠けていたら、つくれなかったと思います。

じゃんご:この過程も、いろんな方が勇気づけられたと思います。僕も勇気づけられました。

 

まわりと同じことができないのが普通

じゃんご:「高次脳機能障害」との”うまい付き合い方”というか、”生活においての工夫”はありますか?うまく言葉にできないですが…。

 

ちさと:私、自分のせいにする癖があるんです。なにかできないと「自分のせいなんだ」って思う癖があって…

でもそれを「まぁいっか」って考え方に変えれるように気持ちをもっていきます。しょうがない。って。

 

ちさと:一回どん底まで気持ちが落ちるんです。落としちゃって、そこから上がるって感じです(笑)

もうあんまり落ち込んでなくても下げちゃって、上げます。

 

じゃんご:どんな状況でもプラスにもっていく、ってことを大事にしてるんですね。

 

ちさと:障害ってまわりと同じことができないのが普通なんだ!って思うようにして、気楽に、あんまり頑張らないようにしています。

頑張りすぎるとパンクしちゃうんで。無理しない。

 

将来より現在。

 

じゃんご:「今の夢」とか「目標」などありますか?

 

ちさと:「夢」ってあんまりなくて、結構取材でも夢のこときかれるんですけど、計画を立てることが苦手なので想像とかできなくて。

今しかできないことを全力でやる、っていう感じです。

 

じゃんご:その考え方って大事だと思います。

僕はちさとさんを知ってから、より一日一日が大切なんだな、って改めて気づかされました。いまこうしてお話しできてるのも、素晴らしいことだなって。

 

ちさと:「病む」とか「楽しい」とかって感覚はその瞬間でしか味わえないことなので…あえて自分で病みにいくってこともあって。

 

ちさと:ぶっちゃけ、病んでるときの方が歌詞書けるんです!(笑)

 

じゃんご:じゃあ歌詞書くときは、病んでるんですね?

 

ちさと:そうです!「歌詞できた~♪」っていうときは結構病んでる時(笑)

 

じゃんご:ちさとさんにしかだせない「病み」が、ストレートな歌詞に反映されてるんだ!

 

自分らしさを伝えること

じゃんご:全国のちさとファン、
同じ障害を持っている方へ届けたいメッセ―ジなどありますか?

 

ちさと:自分の歌を感じてくれたらいいなぁ~って思います。

つくった曲や歌詞、
直接私の歌を聴きに来てほしい。

 

じゃんご:その瞬間を見て聴いてほしいんですね。

 

ちさと:だからライブ中はできるだけお客さんと目を合わせるようにしてて…でも目を合わせすぎて歌詞わすれちゃったりするんですけど(笑)

じゃんご:しっかり伝わってると思います!

 

じゃんご:こんな感じで、聴きたい事終了です!
今度ライブ行きますね!

ちさと:ありがとうございましたぁ~。

 

最後に

今回、ちさとさんと対談をさせていただくにあたって、僕自身すごく不安でした。

「どうやって接したらいんだろう」

「傷つけるような事を言ってしまうのでは」

対談中もずっと考えながら
進めていきました。

もしかしたらこの記事に書いた文字たちも、彼女や同じ障害を持っている人にとっては痛く、辛い表現ばかりかも。

それでも理解したいし、伝えたい。
彼女も、障害のことも。

 

すぐに忘れるんですよ。印象に残っていることしか覚えていないんです(笑)」と笑顔で語る表情からは、僕が味わったことのない経験や、今この瞬間を生き抜く強さが伺えました。

 

目に見えない彼女の「想い」をつづりました。

 

<弾き語りシンガーソングライター・ちさと>

 

<取材・撮影協力>

2018年8月にオープンしたばかりの大館市スイッチカフェさんで取材させていただきました!

店内は日あたりもよく、ゆったりとした時間を楽しめます。

大館駅から歩いて行ける距離にあります。

またいきますね!

  • S.witch cafe(スイッチカフェ)
  • 〒017-0044 秋田県大館市御成町1丁目12-27
  • 080-1685-1904
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