本日は那波商店(なばしょうてん)に来ました!
那波商店とは?
秋田県秋田市にある、東北初となる鉄筋コンクリートでつくられた酒蔵。代表銘柄は『大吟醸 銀鱗』、『純米吟醸 竜乃涙』、『純米酒 こまち美人』など。
今日はここで、秋田県立大学の学生が「究(きわむ)プロジェクト」の活動をしているという噂を聞きつけて取材に来ました。さっそく様子を見ていきましょう!
学生が日本酒づくり!?
おお!本当に学生さんたちが作業してる!
あっ、先生がいる!すみません、究プロジェクトってどんな活動をしているんですか?
”若者が気軽に手に取って楽しめる飲みやすい日本酒づくり”をコンセプトに、学生が主体となって開発・研究をしているプロジェクトです。
日本酒づくりかぁ~。学生にはかなり貴重な体験ですよね。
学生たちはこのように酒蔵での作業をするだけじゃなく、酒米を収穫したり、麹菌の開発もしているんですよ。最終的に完成した日本酒は純米吟醸酒『究(きわむ)』と名付け、毎年本学の卒業式に合わせて販売しています。プロジェクトが始まった当初はまったく売ろうとしていませんでしたが、思いのほか良いお酒ができたので商品化しようとなりました。
販売もしているんですか!?
はい!毎年3月下旬以降から、秋田市内の酒店などで販売されています。
『究』はどんなお酒ですか?
毎年違う酵母を使っているので、その年によって味が違うのが特徴です。コンセプトにあわせてオリジナルの酵母をつくるのですが、その判断はすべて学生に任せています。
今年はどんな味にしようと思っていますか?(学生にも聞いてみよう!)
若い人たちに選んでもらえるように、華やかな香りを楽しめるすっきりとした味わいの日本酒を目指しています!
今日は洗米の作業を体験していましたが、どうでしたか?
酒蔵では冷たい水場で作業をします。日本酒は手軽に買えますが、こうして作業を体験すると「完成するまで大変なんだな~」と感じましたね。
日本酒づくりは重労働が多くて苦労するなと感じました。
実は去年も頑張って作業をして『究』をつくったんです。冷たくて大変な作業が多いですが、やっぱり自分たちがつくったお酒はおいしく感じます。
究プロジェクトに関わる学生は、みんなお酒が大好きなんですよ。ですが周りを見渡せば、「若者の日本酒離れ」が進んでいます。だったら若者世代が楽しめるような、気軽に手に取ってもらえるような日本酒を学生たちでつくろうと。そうやって活動の幅を広げてきたプロジェクトなんです。
学びのある究プロジェクト
みなさんが究プロジェクトに参加したきっかけを教えてください。
1年生の時に、大学内に掲示されていたポスターを見て参加しようと思いました。
私はお酒に関わる勉強がしたくてこの大学に入りました。高校生の頃からこのプロジェクトの存在を知ってたので、楽しそうと思って。
僕は安木から誘われて参加しました!
なぜかわからないですけど、このプロジェクトに参加する学生は女性が多いんですよね~(笑)
僕は小さいころから日本酒づくりに興味を持っていました。進学しようとなったとき、この大学で発酵など日本酒に関わる研究ができることを知って、秋田県立大学を選びました。就職先はもちろん酒蔵です!
酒蔵に就職!?すごいですね~。このプロジェクトではどんなことを学べましたか?
微生物の研究ができたり、今日のように酒蔵の作業をお手伝いできるのはとても勉強になりますね。今後のモチベーションにもつながります。
日本酒がつくられるまで不透明な部分がたくさんあったので、それを知ることができたのはとても良い経験です。なのでお酒を飲む時は、「いろんな過程を経てつくられたお酒なんだな~」と、作り手の苦労やありがたさを感じるようになりました。
このプロジェクトの面白さはどこにありますか?
イベントで『究』を販売した時、お客さんから「おいしかったよ」という声をいただいた時は嬉しかったです!
私たちがつくった日本酒をめがけて買いに来てくれた方もいて嬉しかったですね。ただお酒をつくるだけじゃなく、販売も体験することで消費者とコミュニケーションがとれるのも、究プロジェクトの面白さだと思います!
実際に飲まれた方から「俺、この酒好きだよ!」と言われた時は感動しちゃいましたね。
ものづくりに対する姿勢
続いて、学生に酒蔵の作業を教えている山谷さんにお話を伺いました!
秋田県立大学と日本酒をつくるという話があったとき、どのような印象を受けましたか?
学生たちと協力することで、那波商店に新しい風が吹き込めばいいなと思いました。学生たちは酒蔵がしないような細かい研究をしているので、そういう部分も勉強できたらなとワクワクしていました。
今年の「究」の出来はどうですか?
今の段階だとまだわかりませんね。日本酒はちょっとの変化で味が変わってしまうので、まだまだ気が抜けません。先ほど学生たちに”もろみ”を試食してもらったところ、「味がいい」と言っていました。今年もおいしい『究』ができると思います!
実際に学生と作業して、感じたことはありましたか?
ものづくりに対する姿勢が真面目でした。今後どんな道を歩むのか分かりませんが、一生懸命に取り組む姿には明るい未来が感じられます。那波商店としても、ものづくりに対する気持ちが高まりましたね。
先生にも積極的に質問していたのが印象的でした。
そうですよね!学生は先生との関係がフランクで、いい意味で友達のような感覚でコミュニケーションをとっています。なので、勉強というより趣味の感覚で楽しく学べているんだなと思います。
発酵・微生物・日本酒好きは集まれ!
究プロジェクトを立ち上げたきっかけを教えてください!
もともと日本酒は酒米をつくるところから始まりますし、大潟村には本学の田んぼがあるので、使わないともったいないなと。そして応用生物科学科の学生が受ける授業には、実際に土に触れることが無いんですよね。せっかく微生物の研究をしているのに農作業をしないで卒業するのはもったいない!と思い、このプロジェクトを立ち上げました。
今後はどのような活動をしていきたいですか?
那波商店との日本酒づくりや、イベントでの販売をこれからも続けていきたいです。あとは本学の卒業生が秋田県内の酒蔵に就職しているので、OB・OGが働く酒蔵ともコラボできたらなと考えています。
若者の日本酒離れが進んでいますが、先生はこれをどう捉えていますか?
日本酒は國酒(こくしゅ)なので、どんなに製造量が減ってもゼロになることは考えられません。昔であれば価格を問わず、「ただ酔えたらいい」という感覚で日本酒が選ばれてきました。ですが今日では売れるお酒が絞られて、少しくらい高くてもおいしいお酒が選ばれるようになりました。なので今後は、「おいしいお酒を手間暇かけてつくる」という点が大切になってくるのかなと思っています。
究プロジェクトはどんな学生を求めていますか?
お酒が飲める・飲めないは一切関係ありません。実際に酒蔵で作業をしたり、微生物を間近に見ることができるのはこのプロジェクトの強みです。発酵や微生物に少しでも興味を持っていたらぜひ参加してください!
究プロジェクト、今後の展開が楽しみです!今日はありがとうございました!
究プロジェクトについて
秋田県立大学の究プロジェクトをもっと知りたい方は、公式ツイッターで最新情報をチェックしてみましょう!また、伊藤先生の醸造研究室で学べる内容は秋田県立大学公式HPから確認できます!