秋田県立大学の学生が日本酒を開発・販売する「究プロジェクト」とは?

じゃんご
本日は那波商店(なばしょうてん)に来ました!
那波商店とは?

秋田県秋田市にある、東北初となる鉄筋コンクリートでつくられた酒蔵。代表銘柄は『大吟醸 銀鱗』、『純米吟醸 竜乃涙』、『純米酒 こまち美人』など。

酒米を洗ったりする作業場

もろみをつくるタンク

貯蔵タンク

じゃんご
今日はここで、秋田県立大学の学生が「究(きわむ)プロジェクト」の活動をしているという噂を聞きつけて取材に来ました。さっそく様子を見ていきましょう!

学生が日本酒づくり!?

じゃんご
おお!本当に学生さんたちが作業してる!

米の表面に残っているヌカを取り除く「洗米」を体験している

およそ10キロの酒米を洗米機に入れ、水圧で余計なヌカや米くずを取り除く

冷水で洗米…。冷たそう!

洗った酒米を水に浸す「浸漬」を行う様子

水を含んだ酒米はかなり重そう

じゃんご
あっ、先生がいる!すみません、究プロジェクトってどんな活動をしているんですか?
伊藤先生
”若者が気軽に手に取って楽しめる飲みやすい日本酒づくり”をコンセプトに、学生が主体となって開発・研究をしているプロジェクトです。
じゃんご
日本酒づくりかぁ~。学生にはかなり貴重な体験ですよね。
伊藤先生
学生たちはこのように酒蔵での作業をするだけじゃなく、酒米を収穫したり、麹菌の開発もしているんですよ。最終的に完成した日本酒は純米吟醸酒『究(きわむ)』と名付け、毎年本学の卒業式に合わせて販売しています。プロジェクトが始まった当初はまったく売ろうとしていませんでしたが、思いのほか良いお酒ができたので商品化しようとなりました。

『究』が誕生したのは開学10周年となる2009年。名前には「研究を極めた成果」という意味も込められている

じゃんご
販売もしているんですか!?
伊藤先生
はい!毎年3月下旬以降から、秋田市内の酒店などで販売されています。
じゃんご
『究』はどんなお酒ですか?
伊藤先生
毎年違う酵母を使っているので、その年によって味が違うのが特徴です。コンセプトにあわせてオリジナルの酵母をつくるのですが、その判断はすべて学生に任せています。
じゃんご
今年はどんな味にしようと思っていますか?(学生にも聞いてみよう!)
柳沢さん
若い人たちに選んでもらえるように、華やかな香りを楽しめるすっきりとした味わいの日本酒を目指しています!
じゃんご
今日は洗米の作業を体験していましたが、どうでしたか?
柳沢さん
酒蔵では冷たい水場で作業をします。日本酒は手軽に買えますが、こうして作業を体験すると「完成するまで大変なんだな~」と感じましたね。
大山さん
日本酒づくりは重労働が多くて苦労するなと感じました。
安木さん
実は去年も頑張って作業をして『究』をつくったんです。冷たくて大変な作業が多いですが、やっぱり自分たちがつくったお酒はおいしく感じます。

学生たちは酒米の収穫作業も体験する

伊藤先生
究プロジェクトに関わる学生は、みんなお酒が大好きなんですよ。ですが周りを見渡せば、「若者の日本酒離れ」が進んでいます。だったら若者世代が楽しめるような、気軽に手に取ってもらえるような日本酒を学生たちでつくろうと。そうやって活動の幅を広げてきたプロジェクトなんです。

学びのある究プロジェクト

生物資源学部 応用生物科学科 4年 安木理沙子さん

生物資源学部 応用生物科学科 4年 大山さくらさん

生物資源学部 応用生物科学科 4年 柳沢光玲(みれい)さん

じゃんご
みなさんが究プロジェクトに参加したきっかけを教えてください。
大山さん
1年生の時に、大学内に掲示されていたポスターを見て参加しようと思いました。
安木さん
私はお酒に関わる勉強がしたくてこの大学に入りました。高校生の頃からこのプロジェクトの存在を知ってたので、楽しそうと思って。
柳沢さん
僕は安木から誘われて参加しました!
伊藤先生
なぜかわからないですけど、このプロジェクトに参加する学生は女性が多いんですよね~(笑)
柳沢さん
僕は小さいころから日本酒づくりに興味を持っていました。進学しようとなったとき、この大学で発酵など日本酒に関わる研究ができることを知って、秋田県立大学を選びました。就職先はもちろん酒蔵です!

柳沢さんは長野県の酒蔵へ就職することが決まっている

じゃんご
酒蔵に就職!?すごいですね~。このプロジェクトではどんなことを学べましたか?
柳沢さん
微生物の研究ができたり、今日のように酒蔵の作業をお手伝いできるのはとても勉強になりますね。今後のモチベーションにもつながります。
大山さん
日本酒がつくられるまで不透明な部分がたくさんあったので、それを知ることができたのはとても良い経験です。なのでお酒を飲む時は、「いろんな過程を経てつくられたお酒なんだな~」と、作り手の苦労やありがたさを感じるようになりました。
じゃんご
このプロジェクトの面白さはどこにありますか?
安木さん
イベントで『究』を販売した時、お客さんから「おいしかったよ」という声をいただいた時は嬉しかったです!

イベント「I Love 秋田産応援フェスタ」に出店した様子

大山さん
私たちがつくった日本酒をめがけて買いに来てくれた方もいて嬉しかったですね。ただお酒をつくるだけじゃなく、販売も体験することで消費者とコミュニケーションがとれるのも、究プロジェクトの面白さだと思います!
柳沢さん
実際に飲まれた方から「俺、この酒好きだよ!」と言われた時は感動しちゃいましたね。

ものづくりに対する姿勢

那波商店 チーフブレンダー 山谷康幸さん

続いて、学生に酒蔵の作業を教えている山谷さんにお話を伺いました!

じゃんご
秋田県立大学と日本酒をつくるという話があったとき、どのような印象を受けましたか?
山谷さん
学生たちと協力することで、那波商店に新しい風が吹き込めばいいなと思いました。学生たちは酒蔵がしないような細かい研究をしているので、そういう部分も勉強できたらなとワクワクしていました。
じゃんご
今年の「究」の出来はどうですか?
山谷さん
今の段階だとまだわかりませんね。日本酒はちょっとの変化で味が変わってしまうので、まだまだ気が抜けません。先ほど学生たちに”もろみ”を試食してもらったところ、「味がいい」と言っていました。今年もおいしい『究』ができると思います!

酵母を大量に培養してできた酒母(しゅぼ)に、麹、蒸し米、水を加えてできるのが「もろみ」

ほのかに酸味が香っていました!

じゃんご
実際に学生と作業して、感じたことはありましたか?
山谷さん
ものづくりに対する姿勢が真面目でした。今後どんな道を歩むのか分かりませんが、一生懸命に取り組む姿には明るい未来が感じられます。那波商店としても、ものづくりに対する気持ちが高まりましたね。
じゃんご
先生にも積極的に質問していたのが印象的でした。
山谷さん
そうですよね!学生は先生との関係がフランクで、いい意味で友達のような感覚でコミュニケーションをとっています。なので、勉強というより趣味の感覚で楽しく学べているんだなと思います。

発酵・微生物・日本酒好きは集まれ!

生物資源科学部 応用生物科学科 食品醸造グループ 伊藤俊彦 准教授

じゃんご
究プロジェクトを立ち上げたきっかけを教えてください!
伊藤先生
もともと日本酒は酒米をつくるところから始まりますし、大潟村には本学の田んぼがあるので、使わないともったいないなと。そして応用生物科学科の学生が受ける授業には、実際に土に触れることが無いんですよね。せっかく微生物の研究をしているのに農作業をしないで卒業するのはもったいない!と思い、このプロジェクトを立ち上げました。
じゃんご
今後はどのような活動をしていきたいですか?
伊藤先生
那波商店との日本酒づくりや、イベントでの販売をこれからも続けていきたいです。あとは本学の卒業生が秋田県内の酒蔵に就職しているので、OB・OGが働く酒蔵ともコラボできたらなと考えています。

「もろみづくり」を体験する様子

じゃんご
若者の日本酒離れが進んでいますが、先生はこれをどう捉えていますか?
伊藤先生
日本酒は國酒(こくしゅ)なので、どんなに製造量が減ってもゼロになることは考えられません。昔であれば価格を問わず、「ただ酔えたらいい」という感覚で日本酒が選ばれてきました。ですが今日では売れるお酒が絞られて、少しくらい高くてもおいしいお酒が選ばれるようになりました。なので今後は、「おいしいお酒を手間暇かけてつくる」という点が大切になってくるのかなと思っています。

『究』は毎年2000本出荷。昨年出荷したものは、ほぼ完売した

じゃんご
究プロジェクトはどんな学生を求めていますか?
伊藤先生
お酒が飲める・飲めないは一切関係ありません。実際に酒蔵で作業をしたり、微生物を間近に見ることができるのはこのプロジェクトの強みです。発酵や微生物に少しでも興味を持っていたらぜひ参加してください!
じゃんご
究プロジェクト、今後の展開が楽しみです!今日はありがとうございました!
究プロジェクトについて
じゃんご
秋田県立大学の究プロジェクトをもっと知りたい方は、公式ツイッターで最新情報をチェックしてみましょう!また、伊藤先生の醸造研究室で学べる内容は秋田県立大学公式HPから確認できます!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です