秋田県の自殺対策推進事業をしている「蜘蛛の糸」では2019年3月から、誰かに聴いてもらいたいこと、一緒に考えてほしいことなどをSNS(LINE)を通して相談できる「若者サポートライン~Youth Support Line~」というサービスを開始します。
秋田県の自殺率についてやその現状、若者サポートラインについて取材してきました。
目次
鎌田悠香子プロフィール
秋田県大仙市在住。
特定非営利活動法人あきた自殺対策センター・蜘蛛の糸 スタッフ
大学在学中に、いわゆる燃え尽き症候群を経験、周囲の支えにより回復を遂げる。
大学卒業後は一般企業へ就職。
その後、友人やいとこの自死をきっかけに若者自殺予防に携わる。
東京では若者自殺予防のNPO法人に所属し、ボランティアスタッフとして経験を積む。
2017年からは地元秋田で「NPO法人 蜘蛛の糸」のスタッフとして秋田の自殺予防に取り組んでいる。
蜘蛛の糸の活動をはじめたきっかけ
実際に自分の友人を自死で亡くした時に「これはやらないといけないな」って思いました。そのタイミングが今のような活動をする転機となったというか、考え方が変わったところです。
「この現状をなんとかしたい!」という想いで、2015年に佐藤理事長に「東京で自殺予防の活動をできるところはないですか」と相談をしました
「死んだら苦悩から逃れられる」
大学に行くのは当たり前、レールから外れないのが当たり前。そのレールから外れたら何が残るんだろう…という感じです。そこから振り落とされないようにと結構ガチで悩んでいました。
やってもやっても終わらないというか。出口が見えない感じがして…。
その中で「死にたい」と思うこともありました。「死んだらこの勉強の苦痛から逃れられる」じゃないですけど。そういう思考でした。
心身の苦痛
大学は1年通えたのですがやっぱりしんどくて、相談室に行ったら「あなたは休んだほうがいいですよ」と言われました。
カウンセリングの先生から「今でも十分頑張ってるんだよ」という言葉をかけてもらったとき、初めて認めてもらえた感覚があってホッとしました。
自分の想いを伝えること
だけど、どうしても部活をあきらめきれなかったので4年間部活を頑張って、留年する1年は卒論を書くだけの状態にしようと考えたんです。
その時に初めて「留年しても何もかわらない」って気づいたんです。友だちの態度も変わらない、一緒に授業を受ける1個下の人たちも全然受け入れてくれる。
あれ?全然平気じゃん!って思えました。「1回休み」をしても大丈夫なんだって、そこで気づきました。それからは、疲れる前に休めるようになりました。
自分の意志を持つことの大切さ
そのような状態から「復帰できた」というか、健康な状態に戻れたきっかけを教えてください。
それを客観的に、論理的に指摘してもらったことが良かったのかなと。そのままの自分を受け入れたもらえた経験も大きいですね。
そのことをカウンセラーに相談したら、「スーパーに行って食材を見て食べたいものを『頭』じゃなくて『お腹』に聞いてみなさい」って言われたんです。
「そんなことできるかな…」と思っていたのですが、まずは食材の前に立ち止まって、自分がどう思っているかを探る練習をしました。
相談員として
ただね、僕は「相談員として良い存在になれるか」というのが基点だから。
結局そういうのもなんでも「受かる」が目標じゃなくて、「受かる過程の勉強」が大事だと思ってるんです。結果じゃなくて。なんでもチャレンジ!
僕は山登りが趣味でね、今でも年間15回くらい登ってるんだけど。
だけど山もね、「山頂」がすべてではなくて「登る過程」が楽しみなんだよね。きっと勉強もそうだと思う。
「ここに来た人は死なないよ」って思ってもらいたい。それが僕の最高の目標です。
今は年間200名以上、「蜘蛛の糸」の相談者がいます。僕は相談員として、電話相談・メール相談を受け付けていますよ。
佐藤久男理事長 プロフィール
秋田県秋田市在住。
特定非営利活動法人あきた自殺対策センター・蜘蛛の糸 理事長。
民間主導型「秋田モデル」を推進して秋田県の自殺者半減に貢献。
改正自殺対策基本法のヒアリングで意見陳述。
NHKの「クローズアップ現代」「クローズアップ東北」「
2011年には「NHK東北ふるさと大賞」を受賞。
これまでに応じた相談件数はのべ5000回以上。
北は北海道から南は沖縄までの相談に応じる。
あらゆる活動においてすぐれた働きや成果を残し、秋田魁新聞、毎日新聞、
著書「死んではいけない」(ゆいぽーと)、自殺防止の灯台論(熊谷印刷)、関連図書「あなたを自殺させない」(新潮社 中村智志著)など
NPO法人 蜘蛛の糸について
自分はもともと経営者であり、さらにはうつ病経験者でした。経営者の悲しみや苦しみを知っているので、蜘蛛の糸では自分の経験を役立てて苦悩する人たちを救ってあげられたらなと。
経済問題の相談を続けてきたこともあり、2002年に89名いた自営者(家族従業者)の自殺が2018年には13人と少なくなっています。
私のように「死にたい」って思う人もなんでも話してくれればなって。
LINE相談(若者サポートライン)はお互いの顔も気にせず相談できます!本当に気負わずに相談してくださいね。
今回は取材させていただきありがとうございました!
若者サポートライン~Youth Support Line~
「若者サポートライン~Youth Support Line~」は高校生以上の若者が気軽にLINEで蜘蛛の糸スタッフへ相談することができるサービスです。今回のサービス対象エリアは秋田県・青森県・岩手県に限定されています。
若者サポートラインへの相談は、コミュニケーションアプリ「LINE」をダウンロードしてから以下のLINE IDを検索窓へ入力し、友だち追加することで可能になります。チラシのQRコードからもLINE IDを読み取り、友だち追加することも可能です。
若者サポートライン~Youth Support Line~について
<若者サポートライン LINE ID>
●秋田県にお住まいの方
「@rnn7496a」
●青森県・岩手県にお住まいの方
「@oww7635r」
<相談期間・対応時間>
2019年3月1日(金)~26日(火)
17:00~21:00
※水曜日と木曜日はお休みです
<対象者>
高校生以上の若者(学校中退・ひきこもりの方からの相談もお受けしています)
<対象エリア>
秋田県・青森県・岩手県
いのちの総合相談室
「蜘蛛の糸」では毎月、弁護士、司法書士、臨床心理士、社会保険労務士、産業カウンセラーなど専門家と民間団体の相談員があらゆる悩みに応える「いのちの総合相談会」を行っています。
具体的な相談内容としては
- 多重責務
- 法律問題
- 経営問題
- 家庭問題
- 職場の人間関係
- こころの悩み
- 若者の問題
など
この相談会は毎月無料で行っており、相談には事前申し込みが必要です。
いのちの総合相談会について
<会場>
協働大町ビル3階(秋田市大町3-2-44)
<時間>
午前10時~午後5時
<日程>
2019年3月5日(火)~9日(土)
※事前申し込みが必要です。
※平成31年度の実施につきましては「蜘蛛の糸」へお問い合わせください。
<お申込み・お問い合わせ>
NPO法人 蜘蛛の糸
●TEL:018-853-9759
●FAX:018-853-9758
さいごに
秋田県の情報を発信する「じゃんごブログ」では、これまで秋田県の自殺率のデータをまとめた記事を発信しています。
秋田の自殺のリアルに改めて触れることで、次第に「自分にできることはないか」と考えるようになった反面、秋田の発信者・編集者として「簡単に自殺を語っていいのか」という葛藤もありました。
どこの馬の骨とも分からないようやつが「秋田県民全員で自殺予防に心がけましょう」「救える命があるんです」と発言する権利はあるのか…って。
ですからこれまで手掛けた「秋田の自殺」をテーマとした記事は、自分の想いなどを一切入れず、ただ情報だけを伝えていました。
逃げていたんです。
難しいテーマをとりあげることや、自分の想いを伝えることを。
今回の記事は蜘蛛の糸スタッフの鎌田さんからオファーがあり、実現しました。依頼のメールが来た時は、神様から「逃げるなよ」と言われているようでした。
逃げずに取材をし、取材以外の個人的な質問にも応えていただいたおかげで、僕の心のモヤモヤは少しずつ紐解かれていった気がします。
人を救う佐藤理事長や鎌田さんとは「過程」が違うかもしれませんが、僕にも救える命があるかもしれません。
発信することで救える命がある。
誰かの心からまた誰かの心へと、自殺予防意識や蜘蛛の糸が伝わってほしいなと願っています。
もし、あなたが誰にも言えない悩みを抱えてこの記事に辿りついたなら、真剣に話を聞いてくれる人、助けになる人たちがいることを忘れないでほしい。
<今回取材した場所・相談に乗ってくれる場所>
NPO法人 蜘蛛の糸
- 【住所】
秋田市大町三丁目2-44 協働大町ビル3F - 【TEL】
018-853-9759 - 【FAX】
018-853-9758 - 【Facebook】
https://www.facebook.com/kumonoito.akita - 【HP】
http://www.kumonoito.info
仮に偽善であっても、人を助けることが、できたのならば、それは善です。